現在成田空港の駅としては「空港第2ターミナル」と「成田空港」の2つですが、
この2つの駅ができる前には、今の「東成田」駅が「成田空港」駅だったのです。


この駅は成田空港の開港に合わせるべく、突貫工事で昭和47年に竣工しました。
ただ、空港反対運動やパイプラインの工事の遅れなどから、実際の運用は6年遅れで
昭和53年でした。
現在は京成電鉄と芝山鉄道の共同使用駅となっています。

芝山千代田からの電車がホームに入ってきました。
次は終点の成田です。
東成田駅は京成東成田線の終点で、芝山鉄道の始発駅になります。

ホームは地下にあります。


電車が行った後のホームには人影は全くありません。

目を凝らすともう一本ホームがあります。
真っ暗で良く見えませんが、ここがかつての「成田空港」駅のホームです。
駅名板もそのままに、ただ打ち捨てられたように暗い空間に横たわっています。
ここだけは20数年前のまま、時間が止まっています。
平成3年に成田空港線が開通して、空港駅としての役割を終え、
駅名も「東成田」に変わりました。

ここに焼きたてのパンとコーヒーやジュースが飲めるスタンドがありました。
まだ看板もそのまま残っています。
昔、通勤に利用していた頃には良く立ち寄りました。

もともと日中はほとんど乗客のいない芝山千代田駅からの電車が、
成田に向って走り去って行っても、この駅の改札を出る人はいません。
一日の乗降客は約2000人、そのほとんどが空港勤務者で、
通勤時間帯に集中します。

改札を出るとコンコースがあり、見事な陶板壁画が目に入ります。


「曲水の宴」と題された陶板画は、1980年に原画/森田嚝平、造形/ルイ・フランセン、
題字/川崎千春によるもので、壁面いっぱいに広がる見事な作品です。
この壁画も朝夕の忙しい通勤客だけが利用する今では、
ゆっくり愛でる人はいなくなってしまいました。

貨物地区に出る通路です。
今はほとんどの人がこの通路から空港内の職場に向います。
出口には警備員がいて、空港の通行証の提示を求めます。

こちらが正面出口に通じるエスカレーターですが、
ここから出る人がほとんどいない今は止まっていて、階段を上ることになります。

成田空港駅だったころは、ここから空港へシャトルバスで向いました。
荷物検査があり、パスポートの提示が求められ、電車が着くといつも大混乱したものです。


正面口を出ると直ぐ後ろに管制塔が見えます。
この駅は空港の真ん中に作られた駅なのです。



ピーク時には1日平均2万人を超える乗降客があっただけに、
当時を知る者としては、この景色には寂しさを感ぜずにはいられません。



改札口の脇に不思議な地下道があります。
500メートル先の空港第二ターミナル駅に通じています。
途中で直角に曲がり、アップダウンのある地下道は、先が見通せないため、
実際以上に長く感じます。
誰もいない、見通しが悪い地下道は少し不気味な感じです。
以前は両側の壁に地元の小学生の絵や習字が年に数回張り出されていましたので、
なんとか気が紛れたものです。



ようやく空港第2ターミナル駅に出ました。
右に行けば空港への検問ゲート、左に行けば改札口です。
京成東成田線の終着駅、芝山鉄道の始発駅、
そして、忘れられた成田空港駅・・・
静かで寂しい、レトロな雰囲気を味わいたいなら、日中の東成田駅はお勧めです。
※東成田駅 成田市古込字込前124