表参道があるのなら裏参道も・・・と考えましたが、どうも良く分かりません。
多分、この道だろうと歩いて、後に出てくる出雲屋のご主人と、
成田山の平和大塔の脇にある食堂のおかみさんに聞いて確認できました。

スタート地点は408号線の「成田山裏門入口」の交差点です。
51号線側からは「土屋」交差点の1つ手前、イオンモールのはずれがこの交差点です。

100メートルほど入ると右側に「大宮神社」があります。
秀吉の時代、殿台城主馬場伊勢守勝政により建立ですから、
約400年の歴史があります。

古い標識には「右 あじき龍○さ○(龍がさき)」
「左 なりたさん」と彫られています。


この大宮神社は以前に詳しく取り上げましたので、先を急ぎましょう。
(左欄の「記事の分類とアップ数」の「神社・仏閣」をクリックすると出てきます)

特に目立つものも無い普通の道です。
「参道」をイメージできるものは見当たりません。

10分ほど歩いてようやく何か由緒ありげな屋号の食堂を見つけました。
出雲屋さん、聞けば創業100年近くになるそうです。
明治の終わりか大正の始めからこの地で商いをしていたわけです。

いなりずしとのりまき、がメインで、蕎麦と丼物もやっています。
今はほとんどの参拝客が車でこの参道を登って行ってしまいますから、
お客さんは地元の人がほとんどでしょう。
でも、正月はこの参道も車の大渋滞と、行き交う人で混雑しますから、
唯一最大のかきいれ時になるのでしょう。

どこまでも平凡な道が続きます。
生活道路として、地元の方々には重要な道路なのでしょうが、
参道として歩きたい人間にとっては何か物足りないような・・・

「土屋中央通」の標識が立っていますが、個人的には「裏参道土屋中央通」と
して欲しかったと思います。
でも、ご近所の方にとっては“裏”という表現は好ましくないのでしょうね。

出雲屋さんから50メートルほど、カーブの先に異様な光景がありました。
この景色は前に2、3度見た記憶がありますが、場所も覚えていませんでした。
「土屋商店会マップ」という大きな看板が掛けられていますが、
看板を立てるための建造物にしては物々しすぎます。


後で調べたところ、これは昔ここを通っていた「軽便鉄道」の陸橋の「橋げた」でした。(※1)
後日あらためてここを訪ねて良く見てみましたが、言われてみればなるほど頑丈な橋桁です。
三里塚へ向かうのにずいぶんと回り道をしていたようです。
軽便鉄道に関しては、あちこちで話しは聞くのですが、
ほとんど痕跡が残っていません。
いずれ、行く先々で聞く軽便鉄道の話しをつなぎ合わせてみようと思っています。

家並みの切れ目から「平和大塔」が見え隠れしています。
「平和大塔」は昭和59年の建立ですから、
この道が裏参道と言われていた頃には見えなかった景色です。


相変わらず興味をそそられる景色が現れません。
しばらく歩いてお寺の看板を見つけました。

横町を入ると古い旅館がありました。
様子からしてもう営業はしていないようですが、参道の名残のような気がします。

長い階段が現れました。
がんばって登ってみました。


ひょっこり出た場所は、成田山の釈迦堂の裏にあるお土産物屋さんや
占い部屋、食堂が並ぶ広場の裏手でした。
釈迦堂の屋根も見えます。
薬王寺はどこにあるのでしょう?
どうやら道を間違えたようです。

あわてて来た道を引き返します。
階段の登り口にさっきは気がつかなかった石柱が立っています。
「従是西貮百六間 従是東五拾貮間四尺 新勝寺所有地」と書かれています。
裏面には「明治二十七年建立」とありました。
この階段から上は新勝寺の土地だったのですね。

参道に戻り一本前の路地を入ると、ありました、薬王寺。


立派な山門です。


薬王寺は天台宗のお寺で、ご本尊は木造の「阿弥陀如来」です。
天正十八年(1590年)までは殿台城主の馬場伊勢守勝政(大宮神社を建立)の
持仏だったものです。
このお寺にはたくさんの歴史が詰まっているようです。
いずれもう一度ゆっくり訪ねてみたい場所です。



境内の裏側に回ると、狭く急な石段がありました。
本堂の裏手から延びる階段ですが、あまり人が利用している様子がありません。
進んで良いものか、迷いましたが、好奇心には勝てません。
登りきったところに「福聚観世音」がありました。


この先を左に行けば成田山の平和大塔に続きます。
右には額堂の屋根が見えています。
曲がりくねった参道と路地、お寺の階段と歩いていると、方向感覚が無くなってしまいます。
何でここに出るのか良く分かりませんが、隠れた裏道を発見したような喜びがあります。


参道に戻ってきました。
さすがに成田山に近付くと、古い家や壊れかけた土蔵などが見えて、
参道らしい雰囲気が出てきます。

ずっと見え隠れしてきた「平和大塔」も大きく見えています。
成田山裏門は目の前です。
今回は脇道にそれてばかりでしたが、まだまだ気になる脇道がありました。
機会があれば探索してみたいと思います。
※1 「成田の史跡散歩」(小倉 博 著 崙書房)80ページ。
※ 薬王寺 成田市土屋8