
前回最後に紹介した薬師堂から坂を下ります。

薬師堂と通りをはさんで成田出身の俳人、三橋鷹女(みはし たかじょ)の像が立っています。
成田高等女学校を出た鷹女は若山牧水や与謝野晶子に師事し、
夏痩せて 嫌ひなものは 嫌ひなり
鞦韆(しゅうせん)は 漕ぐべし 愛は 奪うべし
等の激しい句で知られています。

ここは駅から続く表参道が、郷部(ごうぶ)方面から来る西参道と合流する地点です。
右に下れば成田山の総門、左を行けば以前紹介した三ノ宮埴生神社に至ります。
二股路に古い酒屋さんが建っています。
前回紹介した成田の地酒「長命泉」のノボリが見えます。

参道は緩く右に曲がりながら下って行きます。
ここまで来ると両側に続く店はいずれも歴史を感じさせるものばかりです。


うなぎ屋、薬屋が目立つ一角ですが、オリジナルの竹製品を売る店も繁盛しています。

道はこんどは緩く左へと曲がって行きます。


うなぎで有名な「川豊本店」です。
店先でうなぎをさばき、おいしそうな匂いの煙を参道に流しながら焼いています。
休日には行列が絶えない名店です。
かつては旅館だった建物は、大正6年に建てられたものです。

川豊本店の向いには「成田観光館」があります。


中には7月の成田祇園祭に使われた山車を始め、
数々の成田にまつわる展示物を見ることができます。





入場無料なので、歩き疲れた方の恰好の休憩所になっています。

目立たない細い路地の奥にしゃれた甘味処がありました。
両側のお店のひさしの間を抜けて入って行くような感じで、
気をつけていないと見過ごしてしまいます。


この場所にこんな空間があるとは・・・
表通りの喧騒は聞こえてきません。
あまり知られていない店なので、ちょっとした隠れ家のような気がします。

そろそろ総門が近づいてきました。


老舗の「梅屋旅館」です。
今は旅館業はお休みで、お食事処として営業しているようです。
交通が便利になると旅館業が苦しくなるという話しは、あちこちで聞きますね。


同じく老舗の「大野屋旅館」です。
こちらも旅館業は開店休業で、お食事処と漬物屋として営業しています。
平成17年に国の有形文化財に指定された建物は、
木造3階建てで望楼が付いているユニークな外見です。
創業は江戸中期ですが、この建物は昭和10年に建てられたものです。
大分前になりますが、大勢の修学旅行の生徒たちが、
二階から参道を眺めていたことを思い出します。

大野屋の先にベンチのある小さな休憩スペースがあります。
「延命院旧跡」と彫られた石碑が建っています。
天保の改革で贅沢なものが狙い撃ちにされた中に、歌舞伎も入っていました。
失意の中にあった七代目市川団十郎に、縁の深い成田山新勝寺が
手を差し延べ、ここにあった延命院に住まわせたのです。

朽ち果てたような木造の建物がうっそうとした庭木の合間から見えましたが、
これが延命院にゆかりあるものなのかは分かりません。



門前町の風情が色濃く残る表参道。
この雰囲気を残し、維持して行くには大変な苦労があることでしょう。
店先をただ通り過ぎるだけではなく、中に入ってその苦労と、
古きものを守って行こうとする“心意気”みたいなものを感じてみたいものです。



大師堂、弁財天と続いて総門に辿り着きました。

表参道から総門をくぐり、仁王門から急な階段を上って大本堂へ。
JR成田駅からは徒歩15分程度の距離ですが、
参拝の行き帰りには是非お店のいくつかを覗いてみて下さい。