
ご祭神は「経津主命(みつぬしのみこと)」で、弘安五年(1282年)に香取神宮から分祀
して創建されたという歴史をもっています。

昭和56年に建てられた明神鳥居。
境内への階段の下、鳥居の脚元に2体の庚申塔(青面金剛)が立っています。

右側に立つ制作年代不詳の青面金剛像。

左側に立つ青面金剛像は天保八年(1875年)の作です。
鳥居の脇には、成田市教育委員会によるこの神社に伝わる伝統芸能についての説明板
が立っています。
「北羽鳥香取神社の獅子舞(成田市指定無形民俗文化財)
毎年4月の第一日曜日、ここ香取神社の祭礼において五穀豊穣を祈って奉納される
伝統芸能です。この獅子舞は風流系の獅子舞といわれる一人立ちの獅子舞で、竜の
頭をいただき、腹に太鼓をつけた大獅子、中獅子、雌獅子の3匹で舞われます。
江戸時代から伝承されてきました。舞は14曲からなる「ほんしば」と、10曲からなる
「花がかり」の2種類で構成され、社殿前の地面に幣束を立て、そこを舞台にします。
「ほんしば」は50分ほど続く舞ですが、獅子舞の見どころの一つになっている雌獅子
を奪い合う踊りも入っています。そして、「花がかり」は、幣束の前で3匹の獅子が1匹
ずつ順番に踊り、最後に大獅子の幣束奉納で終る、25分の舞です。なお、この貴重な
獅子舞を守っていくために、昭和47年に北羽鳥香取神社獅子舞保存会が結成され、
後世に伝える努力が続けられています。」

二の鳥居は稚児柱が付いた台輪鳥居。
平成23年12月の建立ですが、以前ここに建っていた木造の鳥居が、平成23年3月の
東日本大震災の時に損壊したため建て直されたものです。
平成16年に出版された「成田の史跡散歩」(崙書房 小倉 博著)には以前の鳥居について
次のように紹介されています。
「石段を登って行くと今度は朱塗りの鳥居がある。この鳥居は、柱頭上に台輪がのせられ
ており、また柱の支えとして四脚の控柱(稚児柱という)がついていることから、これを両部
鳥居と呼んでいる。」 (P166)

手水盤には文政十年(1827年)と刻まれています。

「袚戸大神」。
裏面は苔むしていて年代は分かりません。

「指定村社 香取神社」の碑は昭和9年の建立です。
大正9年奉納の御神燈



御神燈の左手に名前が消えてしまった木札が立っている神社があります。


拝殿も本殿も装飾のないすっきりした造りです。


弘安五年(1282年)に「香取神宮」より「香取神社」として遷座した際に植えられたと
伝えられる杉の「御神木」。
樹齢は700年以上、幹の周囲は5メートルもあります。
幹には無数の釘痕のようなものがありますが、これは日清・日露・大東亜戦争の際、武運長久
を祈願して絵馬を打ちつけた痕なのだそうです。

「奉待十五夜」と刻まれたこの「月待塔」には、「子安神」と書かれた木札が立っています。
年号の部分が○和三癸亥と欠けていますが、癸亥とありますので享和三年(1803年)
でしょう。(もう一つの可能性がある明和三年(1766年)は丙戌でした。)
子どもを抱いているように見えますが、よく分かりません。
特にお顔が崩れているのが残念です。

御神木の根元にはたくさんの祠が並んでいます。
宝永、享保、文久等の年号がかろうじて読み取れます。

境内の右奥にある「青面金剛尊」の碑には文政八年(1825年)と記されています。




カヤの木でしょうか?
上部はこの通りの状態ですが、下からは新たな枝が伸びています。
何か潜望鏡のようですね。




「香取神社史」には次のような記述があるそうです。
「爰ニ栴檀椿ノ枝ヲ交ヒ、花ノ盛リニハ天紅ヒニ花ノ散ル時ハ地其亦紅ナリ。 依テ豊直三十四
歳直幸十五歳里人ヲ率ヒ花見ノ宴会ス。 時ニ栴檀ノ本ニ異人ノ彷徨ヲ見、衆驚キ怪シム、
豊直進ミ敬礼以テ其ノ来ル由ヲ尋ス。 異人答テ曰ク、吾西国ニ蒙古ノ軍船ヲ破リ香取ノ本宮
ヘノ帰リナルニ、花ノ艶シサニ暫ク立寄リシノミナリ、恐レ怪シムアラント言ヒテ、徐歩シテ
立去ルト見ル間ニ、姿ハ不見成リタリ。 因テ影向在ラセラレタル栴檀ヲ諸人拝礼セシニ年ヲ
経テ枯木相成ツタリ。 因テ爰ニ宮殿ヲ営ミ其ノ栴檀ヲ桶ニ入レ御神体ト崇メ、御内陳ヘ納メ、
年々伊美敷祭祀ヲ営ミ奉仕スル今尚然リ。」 (原文のまま)
(「成田市史 中世・近世編」 P243)
この北羽鳥の「香取神社」が創建された弘安五年の前年には、「元寇の役」という未曾有の
大事件がありました。
ここに出てくる蒙古の軍船とは元寇の役のことであり、この見知らぬ男とは香取神宮の神で
あったというわけです。
元寇の役に吹いた「神風」について、香取地方にはこんな伝承があります。
「蒙古が攻めてきたとき、香取神宮と鹿島神宮の神馬が忽然と消えてしまった。 そして暫く
するとまた帰って来た。 このとき両軍神は神馬に乗って戦いに向かったのだ。」と。
遠い九州での大事件と、この香取神社がつながっている・・・。
単に伝承とだけで片付けたくない、歴史のロマンを感じます。

※ 北羽鳥の「香取神社」 成田市北羽鳥2022
京成成田駅よりコミュニティバス「豊住ルート」
「豊住郵便局前」下車 徒歩約10分